2024年7月27日、パリ五輪の柔道女子48kg級。決勝で相手を技ありで下し、角田夏実(つのだ なつみ)選手が金メダルを手にしました。
31歳11か月での、初めてのオリンピック。日本勢のメダル第1号であり、日本女子48kg級としては20年ぶりの金でした。あの試合をご覧になって、胸が熱くなった皆さんも多いと思います。
その角田選手の身長を調べると、161cmという数字が出てきます。
ここで意外なことが分かりました。48kg級は柔道の最軽量級です。小柄な選手が集まる階級だと思われがちですが、161cmは、その中ではむしろ大きいほうでした。
この記事では、その体格が競技にどう働いたのかを整理しました。あわせて、161cmと162cmという2つの数字がどちらも正しい理由もお伝えします。
角田夏実の身長は161cm

まず、基本の情報から確認します。
身長161cm、リーチ166cm
角田夏実選手の身長は161cmです。あわせて公表されている身体データには、次のようなものがあります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 身長 | 161cm |
| リーチ | 166cm |
| 握力 | 右32kg/左34kg |
| 階級 | 女子48kg級 |
| 段位 | 五段(2023年時点) |
| 組み手 | 左組み |
注目したいのがリーチ166cmです。身長より5cm長いことになります。この数字は、後ほど得意技の話とつながってきます。
基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 角田夏実(つのだ なつみ) |
| 生年月日 | 1992年8月6日 |
| 出身地 | 千葉県八千代市 |
| 血液型 | A型 |
| 出身高校 | 千葉県立八千代高等学校 |
| 最終学歴 | 東京学芸大学 |
| 所属 | SBC湘南美容クリニック |
| 主な実績 | パリ五輪 金(48kg級)/世界選手権 4度優勝 |
2026年1月に現役を引退しています
ひとつ押さえておきたいのが、角田選手はすでに現役を退いていることです。
2026年1月に引退を発表しました。パリ五輪の金メダルから、約1年半後のことになります。この記事では「元選手」として、これまでの歩みを振り返る形でまとめます。
【独自検証】161cmと162cm、どちらも正しい数字でした

角田選手の身長を調べていると、2つの数字に出会います。
161cmと162cmが流通しています
整理するとこうなります。
| 数字 | 掲載元 |
|---|---|
| 161cm | Wikipedia日本語版、国際柔道連盟系のデータベース、産経ニュース |
| 162cm | JOC(日本オリンピック委員会)公式、英語版Wikipedia、Number Web |
1cmの違いです。よくある「どちらかが間違い」という話に見えますが、調べると事情が違いました。
JOC公式には「162cm/52kg」と書かれています
日本オリンピック委員会の公式サイトに、2018年ジャカルタ・パレンバンアジア大会の日本代表選手プロフィールが残っています。
そこに記載されていたのが、次の内容です。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1992年8月6日 |
| 年齢 | 26歳 |
| 身長/体重 | 162cm/52kg |
| 出生地 | 千葉県 |
| 最終学歴 | 東京学芸大学 |
体重が52kgになっている点に気づかれたでしょうか。
つまり、階級が違う時期の数字でした
角田選手は、もともと52kg級の選手でした。48kg級に転向したのは2019年です。
| 時期 | 階級 | 公表されている身長 |
|---|---|---|
| 2018年(アジア大会) | 52kg級 | 162cm(JOC公式) |
| 2019年〜 | 48kg級 | 161cm |
つまり162cmは52kg級だった当時の数字、161cmは48kg級に転じた後の数字ということになります。
計測した時期が違うだけで、どちらかが嘘というわけではありません。身長は測る時間帯や条件で1cm前後動きますし、数年空けば測り直しもあります。
矛盾ではなく、履歴の違いでした。
ただし現在の公式には身長がありません
念のため、現在アクセスできる公式サイトも確認しました。
| 確認先 | 身長の記載 |
|---|---|
| JOC アスリートページ | なし |
| 所属先(SBC東京医療大学 柔道部) | なし |
| 母校・東京学芸大学の紹介ページ | なし |
| 出身地・八千代市の公式ページ | なし |
現在の公式プロフィールには、身長の項目そのものがありませんでした。162cmという数字は、2018年のアジア大会の代表選手データにだけ残っていることになります。
【独自】48kg級では、大きいほうでした

ここからが本題です。161cmという数字が、48kg級という舞台でどういう意味を持つのかを見ていきます。
同じ階級の選手と並べると
柔道女子48kg級で活躍した主な選手を、身長順に並べます。
| 選手 | 国 | 身長 |
|---|---|---|
| ダリア・ビロディド | ウクライナ | 172cm |
| 角田夏実 | 日本 | 161cm |
| シリーヌ・ブクリ | フランス | 156cm |
| 渡名喜風南 | 日本 | 148cm |
上から2番目です。最軽量級の中では、明らかに高いほうに入ります。
同じ日本人の渡名喜風南とは13cm差
とくに分かりやすいのが、同じ日本の渡名喜風南選手との比較です。
渡名喜選手は東京五輪の48kg級で銀メダルを獲得した選手で、身長は148cm。角田選手とは13cmの開きがあります。
同じ国の、同じ階級で、これだけ体格が違うわけです。48kg級という枠が、いかに多様な体型の選手を含んでいるかが分かります。
報道も「軽量級では大きい」と書いています
この見方は、私だけのものではありません。
産経ニュースは2026年3月の記事で、角田選手についてこう書いています。
身長161センチは軽量級では大きく、もともと必要だった減量は6〜7キロに増えて過酷さを増した
メディアの側も、48kg級における161cmを「大きい」と捉えていることになります。
階級制は体重だけを揃える仕組みです
ここで、階級制という仕組みを確認しておきます。
柔道やレスリング、ボクシングなどの格闘技は、体重で階級を分けます。体重差が結果を左右しすぎないようにするためです。
ただし揃えられるのは体重だけです。身長、リーチ、手足の長さ、骨格。これらは階級の枠内でばらばらのまま残ります。
48kg級という枠の中に、148cmの選手と172cmの選手が同居する。24cmの幅がある集団で、同じ48kgを競うわけです。
体重が同じでも、体格はまるで違う
階級制の競技では、体重だけが揃えられます。身長は揃いません。
48kgという同じ重さを、148cmの体に配分するのか、161cmの体に配分するのか。これは実質的に、別の体型です。
本ブログでは同じ体重48kgの髙木菜那さんも取り上げています。スピードスケートの金メダリストで、身長は155cm。角田選手と同じ48kgでも、競技も体格も違います。
体重という数字ひとつでは、選手の体は語れないということです。

【独自】リーチ166cmと、巴投げ

161cmという体格は、角田選手の柔道にどう影響したのでしょうか。
得意技は巴投げと寝技
角田選手の得意技として挙げられるのは、内股、巴投げ、そして寝技(とりわけ関節技)です。
とくに巴投げは代名詞になっていて、東京新聞は「防げない」ともえ投げ、自信の寝技という言葉で表現していました。
巴投げは、手足の長さが効く技です
巴投げは、自分が後ろに倒れ込みながら、足を相手の腹に当てて頭上へ投げる技です。
一般論として、この技では腕と脚の長さが働きます。相手を引き出す距離が長いほど、崩しの幅が広がるためです。角田選手のリーチ166cmは、身長より5cm長い数字でした。
もっとも、本人が身長やリーチをどう意識していたかの記録は見つかっていません。ここは技の性質からの一般的な説明として受け取ってください。
180cmの相手も投げています
象徴的な出来事がありました。
引退後に出場したイベントで、角田選手は身長180cmの柔術世界王者を巴投げで一本にしています。4人抜きを達成し、報道の見出しには「身長関係ない」「小よく大を制す」という言葉が並びました。
19cm上の相手を投げたことになります。
身長が高いと不利になる場面もあります
一方で、身長が高いことが常に有利とは限りません。
柔道では重心の低さが安定につながります。背が高い選手は重心が高くなりやすく、崩されやすい面があります。相手に潜り込まれたときも、対応が難しくなります。
実際、小柄な選手が背負投や内股で懐に入り込む形は、柔道の基本的な戦い方のひとつです。
つまり身長は、有利にも不利にも働く要素ということになります。長いリーチを生かせる技を持っているかどうかで、意味が変わってきます。
角田選手の場合、それが巴投げと寝技でした。
「小よく大を制す」の、少し違う形
ここで、ひとつ考えたいことがあります。
柔道には「柔よく剛を制す」「小よく大を制す」という言葉があります。小さい者が大きい者を倒す、という柔道の理念です。180cmの相手を投げた場面は、まさにそれに当てはまります。
ところが階級の中に戻ると、立場が逆になります。48kg級において、161cmの角田選手は大きいほうでした。148cmの選手と組めば、体格の利を持つ側になります。
つまり角田選手は、階級の中では「大」、階級を超えれば「小」という、二重の立場にいたことになります。
体格の利を持ちながら、それに頼らない技術を磨いた。だからこそ19cm上の相手も投げられた。そう考えると、あの巴投げの重みが少し変わって見えてきます。
161cmは日本人女性の平均とどう違う?

一般社会の物差しでも確認しておきます。
20歳以上の平均は154.3cm
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の日本人女性の平均身長は154.3cmです。
なお、よく見かける「158cm」は文部科学省の学校保健統計における17歳女子の平均値で、調査も対象年齢も違います。混同しないようご注意ください。
平均より6.7cm高い
並べるとこうなります。
| 対象 | 身長 | 差 |
|---|---|---|
| 角田夏実選手 | 161cm | — |
| 20歳以上の日本人女性の平均(厚生労働省) | 154.3cm | +6.7cm |
一般の物差しでは、明確に高いほうです。街で並べば背が高い人に見えます。
競技が変われば「高い」の意味も変わる
面白いのは、同じ161cmでも競技によって意味がまるで違うことです。
本ブログでは、他の競技の選手も取り上げています。
| 選手 | 競技 | 身長 |
|---|---|---|
| 185cmの元バレー代表(狩野舞子) | バレーボール | 185cm |
| 元バドミントン代表の166cm(潮田玲子) | バドミントン | 166cm |
| 角田夏実 | 柔道(48kg級) | 161cm |
| 髙木菜那 | スピードスケート | 155cm |
バレーボールなら161cmは小柄な部類です。柔道の48kg級なら大きいほう。同じ数字が、競技を変えるだけで正反対の評価になります。
なお、体格の違いという点では姉妹で9cm違う例もあります。同じ環境で育っても差が出るものです。

【独自】161cmで48kgに落とすということ

体格が大きいことは、階級制の競技では良いことばかりではありません。
もとは52kg級の選手でした
角田選手は長く52kg級で戦っていました。2017年の世界選手権では、52kg級で銀メダルを獲得しています。
48kg級に転向したのは2019年。26歳を過ぎてからの階級変更でした。
減量は6〜7キロに増えました
階級を4kg落とすということは、それだけ減量の幅が広がるということです。
産経ニュースは「もともと必要だった減量は6〜7キロに増えて過酷さを増した」と書いています。Number Webの記事には、もう少し具体的な数字がありました。
身長162センチ、体重はふだん54キロ→48キロに
普段の体重から6kg落として試合に臨むわけです。161cmという身長を考えれば、48kgはかなり絞り込んだ数字になります。
「めちゃめちゃきつい」
本人の言葉も残っています。
THE ANSWERの記事は「めちゃめちゃきつい」という角田選手の言葉を見出しに掲げ、階級変更で直面した「4kg差の壁」について伝えていました。
金メダルという結果の裏に、こうした日々があったことになります。
それでも階級を落とした理由
なぜ、わざわざ厳しいほうを選んだのか。
東京新聞は「階級変更に挑んでつかんだ31歳の初五輪」という見出しでこの選択を伝えています。52kg級のままでは届かなかった場所に、階級を変えることで手が届いた──そういう決断だったことがうかがえます。
体格と階級のトレードオフ
整理すると、こういう構図になります。
| 52kg級のまま | 48kg級へ転向 | |
|---|---|---|
| 減量の負担 | 軽い | 重い(6〜7kg) |
| 階級内での体格 | 標準的 | 大きいほう |
減量の苦しさを引き受ける代わりに、階級の中で体格の利を得る。角田選手が選んだのは、そういう道でした。
161cmという身長は、48kg級では武器になります。しかしその武器を使うためには、6kgを落とし続けなければならない。体格の話は、そのまま生活の話でもあったわけです。
角田夏実のプロフィール|経歴と戦績

歩みを振り返っておきます。
柔道を始めたきっかけ
角田選手が柔道を始めたのは小学2年生のときです。
きっかけは父親でした。接骨院を経営していた父の影響で、八千代警察署の道場に通い始めたと伝えられています。
学歴
- 八千代松陰中学校(中学2年で全国大会44kg級に出場)
- 勝田台中学校(転校)
- 千葉県立八千代高等学校
- 東京学芸大学
高校時代はインターハイ52kg級で3位に入るなど、上位に食い込んでいます。
2014年の大ケガ
順調に見えたキャリアですが、大学時代に大きな試練がありました。
2014年、右膝の前十字靱帯を断裂します。翌2015年は手術とリハビリに専念することになりました。
膝は柔道選手にとって生命線です。この時期を越えた先に、後年の活躍がありました。
膝のケガから戻るということ
前十字靱帯の断裂は、復帰までに長い時間がかかるケガです。手術のあと、歩く、走る、組むという段階を一つずつ踏み直すことになります。
角田選手が大学時代にこれを経験したのが2014年。復帰後に講道館杯で初優勝したのが2016年です。再び全国の表彰台に立つまで、2年かかった計算になります。
そしてその5年後に世界選手権を制し、8年後に五輪の金メダルを手にしました。31歳11か月という初五輪の年齢の裏には、こうした回り道があったことになります。
戦績年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2013年 | 全日本学生体重別52kg級 優勝、国体優勝 |
| 2014年 | 右膝前十字靱帯断裂 |
| 2015年 | 手術とリハビリに専念 |
| 2016年 | 講道館杯 初優勝、グランドスラム東京 初優勝 |
| 2017年 | 世界選手権52kg級 銀メダル |
| 2018年 | アジア大会52kg級 優勝 |
| 2019年 | 48kg級へ階級変更、講道館杯優勝 |
| 2021年 | 世界選手権48kg級 優勝 |
| 2022年 | 世界選手権48kg級 2連覇 |
| 2023年 | 世界選手権48kg級 3連覇、アジア大会優勝 |
| 2024年 | パリ五輪 金メダル、混合団体 銀メダル |
| 2026年1月 | 現役引退を発表 |
パリ五輪での金メダル
2024年7月27日、決勝でモンゴルのバブードルジ・バーサンフー選手を技ありで破り、優勝しました。
この金メダルには、いくつもの意味がありました。
- 31歳11か月での、初めてのオリンピック優勝
- パリ五輪における日本勢のメダル第1号
- 夏季五輪で日本勢が獲得した通算500個目のメダル
- 日本女子48kg級としては20年ぶりの金
混合団体でも銀メダルを獲得しています。フランス戦では、2階級上の相手を巴投げで破る場面もありました。
角田夏実の身長に関するよくある質問

Q. 角田夏実さんの身長は何cmですか?
161cmです。あわせてリーチ166cm、握力は右32kg・左34kgと公表されています。
Q. 162cmという情報も見ましたが、どちらが正しいのですか?
どちらも公表された数字です。162cmはJOC公式に残る2018年アジア大会時点のもので、当時は52kg級でした。161cmは2019年に48kg級へ転向した後の数字です。測定の時期が違うだけで、矛盾ではありません。
Q. 48kg級の中では大きいほうですか?
はい。渡名喜風南選手が148cm、シリーヌ・ブクリ選手が156cmですから、161cmは階級の中では高いほうです。産経ニュースも「身長161センチは軽量級では大きく」と書いています。
Q. 巴投げが決まるのは身長と関係がありますか?
巴投げは相手を引き出して頭上に投げる技で、一般論として腕や脚の長さが働きます。角田選手のリーチは166cmと身長より5cm長い数字でした。ただし本人がそれをどう意識していたかの記録はありません。
Q. なぜ52kg級から48kg級に変えたのですか?
2019年に転向しています。減量は6〜7キロに増え、本人も「めちゃめちゃきつい」と語る厳しさでしたが、その選択の先に31歳での初五輪と金メダルがありました。
Q. 今は何をしていますか?
2026年1月に現役を引退しています。引退後もイベントに出場し、身長180cmの柔術世界王者を巴投げで一本にするなど、その技術は健在です。
まとめ
角田夏実選手の身長について、この記事で確かめたことを整理します。
- 身長は161cm。リーチは166cmで、身長より5cm長い数字です
- 161cmと162cmはどちらも公表値でした。162cmはJOC公式に残る2018年アジア大会時点の数字で、当時は52kg級。161cmは48kg級転向後のものです
- 48kg級の中では大きいほうでした。渡名喜風南選手の148cmとは13cm差。産経も「軽量級では大きく」と書いています
- 体格の利を得る代わりに、減量は6〜7キロに増えました。普段54kgから48kgまで落として試合に臨んでいます
- 20歳以上の日本人女性の平均154.3cm(厚生労働省)と比べると、6.7cm高い計算になります
- 引退後のイベントでは、身長180cmの相手を巴投げで一本にしています
「小よく大を制す」は柔道を語る言葉です。角田選手は階級の中では大きいほうでしたが、階級を超えれば小さいほうになります。その両方の立場を知っていたことが、あの技術を作ったのかもしれません。
パリ五輪の決勝をご覧になった皆さんにとって、この記事が少しでも背景を知る手がかりになればうれしいです。

