髙木菜那さんの身長は155cm、体重は48kgです。
ところが調べていくうちに、意外な事実に行き当たりました。本人の公式サイトには、身長も体重も一切書かれていないのです。生年月日、出身地、好きな漫画、座右の銘まで載っているのに、身体データの欄だけがありません。
では、ネット中に出回っている「155cm」という数字は、どこから来たのでしょうか。
皆さんがこの記事を読み終えるころには、髙木菜那さんの身長155cmという数字の出どころ、日本人女性の平均と比べた位置、そしてその身長がスピードスケートという競技で何をもたらしたのかが、すべて数字でつながっているはずです。単なるプロフィールの写しではなく、一次資料をたどって検証していきます。
髙木菜那の身長155cmは何を根拠にした数字?公式サイトに身長欄はない

まず、数字の出どころを特定します。ここが曖昧なまま「155cmです」と書いている記事がほとんどですが、根拠をたどると構造がはっきり見えてきます。
本人の公式サイトには身長・体重の記載が一切ない
髙木菜那さんは「NANA TAKAGI Official Web Site」(nana-takagi.com)という公式サイトを運営しています。そのProfileページに載っているのは、次の項目です。
- 生年月日:1992年7月2日
- 出身地:北海道
- 好きな漫画:名探偵コナン
- 座右の銘:「努力をすることに無駄なことはひとつもない」
経歴文も詳しく書かれていますが、身長と体重の欄は存在しません。講演依頼サイト(講演依頼.com)やアスリート派遣サービス(CaSpo)のプロフィールも同様で、身体データは掲載されていませんでした。
引退後の活動が講演・解説・タレント業である以上、身長を載せる必然性がない、という判断だと考えられます。ただし理由は本人・関係者から説明されていないため、断定はできません。
155cmの出どころはJOCの選手登録データ
では155cmはどこから来たのか。答えは現役時代の競技団体への登録データです。
日本オリンピック委員会(JOC)は、オリンピックに派遣した選手のプロフィールを大会ごとに公開しています。そこには身長・体重が明記されており、報道各社もこのデータを基準にしています。芸能人のプロフィールが事務所ごとにばらつくのに対し、アスリートの数字がぶれにくいのはこのためです。
主要6媒体の公表値をすべて突き合わせた結果
実際に主要な公式・準公式ソースを並べてみました。
| 掲載元 | 身長 | 体重 | 掲載時点 |
|---|---|---|---|
| NANA TAKAGI 公式サイト | 記載なし | 記載なし | - |
| JOC ソチ2014 選手プロフィール | 155cm | 47kg | 2014年 |
| JOC 平昌2018 選手プロフィール | 155cm | 48kg | 2018年2月7日時点 |
| 時事ドットコム 北京2022 選手データ | 155cm | 48kg | 2022年1月 |
| フジテレビ「フジスケ」選手ページ | 155cm | 記載なし | 2021年12月22日時点 |
| Wikipedia(日本語版) | 155cm | 48kg | - |
公式サイトを除けば、すべて155cmで一致しました。つまり「本人が公表している数字」ではなく「競技団体に登録され、JOCが公開した数字」が155cmの正体ということになります。ここを押さえておくと、次のセクションの話がわかりやすくなります。
JOCの大会別アーカイブで2014年→2018年の変化を追う
JOCは大会ごとに別ページを残しているため、同じ選手の登録データが年を追ってどう変わったかを追跡できます。ソチから北京までの8年間を並べると、次のとおりでした。
| 大会 | 年 | 身長 | 体重 |
|---|---|---|---|
| ソチオリンピック | 2014年 | 155cm | 47kg |
| 平昌オリンピック | 2018年 | 155cm | 48kg |
| 北京オリンピック(時事通信データ) | 2022年 | 155cm | 48kg |
身長は8年間まったく動いていません。体重だけが21歳時点の47kgから25歳時点で48kgへ1kg増えています。
公表身長が途中で書き換わるケースは珍しくありません。当ブログでも公表値が変わった例として、乃木坂46の公式プロフィールが162cmから163cmへ変更された事例を検証しました。それと比べると、髙木菜那さんのデータは異例といえるほど安定しています。

本人が投稿した「身長155cm〜156cm」は公式値と矛盾するのか

「髙木菜那 身長」で検索すると、Wikipediaに次いで本人のX(旧Twitter)投稿が上位に表示されます。ここが混乱のもとになっているので、丁寧に見ていきます。
2026年4月4日のX投稿は20.7万回表示された
問題の投稿は、本人アカウント(@naaaana777)が2026年4月4日11時24分に発信したものです。本文はこれだけでした。
高木菜那さんの身長は155cm〜156cm
自分自身を「高木菜那さん」と三人称で呼ぶ、少し変わった書き方です。この投稿は20万7,000回以上表示され、4,600件を超える「いいね」と182件の返信がつきました。検索結果に食い込んでいるのはこの反響の大きさが理由です。
なお、なぜこの書き方をしたのか、どんな文脈だったのかは投稿内で説明されていません。前後に会話の流れもないため、意図はわかりません。憶測で理由を書くのは避けます。
身長は1日のうちに1cm前後変わる
数字そのものについては、生理学的に説明がつきます。人の身長は朝がもっとも高く、夜にかけて低くなります。背骨の椎間板が日中の体重負荷で少しずつ縮むためで、その差は1cm前後といわれます。
つまり「155cm〜156cm」という幅のある表現は、公式値155cmを否定するものではありません。むしろ幅で書いたほうが実態に近いともいえます。記事や資料に載せる公式記録としては、JOC登録値の155cmを採用するのが正確です。
ラジオ「NANA TIME」でも身長を取り上げている
身長は本人にとっても語る価値のあるテーマのようです。JFNのラジオ番組「From Athlete!」内のコーナー「髙木菜那 presents NANA TIME」では、2026年5月16日に「身長について」という回が放送されました。
ただし放送内容の文字起こしは公開されていないため、何をどう語ったのかはこの記事では扱えません。関心のある方は番組の配信をあたってみてください。
髙木菜那の身長・体重を含む基本プロフィール一覧

身長以外の情報もまとめて確認しておきましょう。数字が並ぶと、選手としての輪郭がつかみやすくなります。
基本データ早見表
現役時代の登録データと公式サイトの情報を統合すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 髙木菜那(たかぎ なな) |
| 生年月日 | 1992年7月2日(34歳) |
| 出身地 | 北海道中川郡幕別町 |
| 身長 | 155cm |
| 体重 | 48kg |
| 血液型 | A型 |
| 出身校 | 北海道帯広南商業高等学校 |
| 現役時の所属 | 日本電産サンキョー |
| 主な戦績 | 2018年平昌五輪 団体パシュート・マススタート 金/2022年北京五輪 団体パシュート 銀 |
| 引退 | 2022年4月5日 |
| 座右の銘 | 努力をすることに無駄なことはひとつもない |
出身地の幕別町がある十勝地方は、清水宏保さん、島崎京子さん、長島圭一郎さんといった五輪スピードスケート選手を輩出した土地です。地域の環境が競技人生の出発点になっています。
体重48kgから計算したBMIは20.0
身長155cm・体重48kgからBMI(体格指数)を求めると、48÷(1.55×1.55)=約20.0になります。日本肥満学会の基準では18.5以上25未満が「普通体重」なので、その範囲の中では下寄りの位置です。
ただし、この数値を一般女性の体型とそのまま比べるのは適切ではありません。スピードスケート選手の下半身は筋量が多く、同じBMIでも中身の構成がまったく違います。細身に見えても、氷を押し続ける筋力を備えた体だという点は押さえておきたいところです。
自己ベストは1500m 1分52秒06
競技者としての実力は公認記録に表れます。フジテレビ「フジスケ」が公開している2021年12月22日時点の自己ベストは、以下のとおりでした。
- 1500m:1分52秒06
- 3000m:3分57秒81
- 5000m:7分08秒77
3000mで4分を切り、5000mでも7分10秒を切る記録です。155cmという体格でこの数字を出していた事実が、後半で扱う「不利をどう埋めたか」という話につながっていきます。
155cmという身長は日本人女性の平均とどれだけ違うのか

「155cmは低いのか」という問いに感覚で答えても意味がありません。国の統計を使って客観的な位置を確かめます。
17歳女子の全国平均158.0cmより3.0cm低い
文部科学省が2025年2月に公表した令和6年度学校保健統計によると、17歳女子の平均身長は158.0cmでした。17歳はほぼ成長が完了する年齢なので、成人女性の身長を考えるうえで使いやすい基準になります。
| 比較対象 | 身長 | 髙木菜那との差 |
|---|---|---|
| 髙木菜那 | 155.0cm | - |
| 17歳女子の全国平均 | 158.0cm | 3.0cm低い |
| 16歳女子の全国平均 | 157.7cm | 2.7cm低い |
| 15歳女子の全国平均 | 157.1cm | 2.1cm低い |
差は3.0cmです。極端に小さいというほどではないものの、平均より確実に低い位置にあることが数字で確認できました。日常生活では気にならない差でも、世界の頂点を争う舞台では意味が変わってきます。
155.0cmは13歳女子の平均身長と同じ数字
同じ統計表を年齢別にたどると、興味深い一致が見つかりました。令和6年度学校保健統計における13歳女子の平均身長は155.0cmで、髙木菜那さんの身長と完全に同じ数字なのです。
学校保健統計の年齢は4月1日時点の満年齢で区分されるため、13歳はおおむね中学2年生にあたります。つまり髙木菜那さんの身長は、統計上「中学2年生女子の平均身長」と一致していることになります。
本人が語る「中学2年で伸びが止まった」と一致する
この一致は偶然ではありませんでした。中日新聞は平昌五輪のマススタート優勝を報じた2018年2月25日の記事で、髙木菜那さんについて「身長の伸びは中学二年生で止まった」と伝えています。
本人の証言と全国統計が、155.0cmという同じ数字でぴたりと重なったわけです。中学2年生の平均身長のまま成長が止まり、その体で世界の頂点に立った。この構図が数字の裏づけを得たことになります。
155cm前後で第一線に立つ女性は、競技以外の世界にも数多くいます。当ブログでは山本舞香も155cmであることを検証しましたし、田中みな実は153cmとさらに小柄ながら第一線を走り続けています。数字そのものより、それをどう使うかが結果を分けるという点は共通しています。
髙木菜那の身長が語られ続ける理由|「そちらは妹さんですか?」
そもそも、なぜ髙木菜那さんの身長はこれほど話題になるのでしょうか。理由は明確で、すぐ隣に9cm背の高い妹がいたからです。
幼少期の写真では姉のほうが背が高かった
意外に思われるかもしれませんが、幼いころは姉のほうが大きかったのです。
髙木菜那さんは2025年5月30日、妹・美帆さんの誕生日に合わせて幼少期の姉妹写真をInstagramに公開しました。デイリースポーツによると、その写真では姉の菜那さんのほうが背が高く、ファンからは「菜那ちゃんが大きい!」「こんなに身長違いますか!?」と驚きの声が上がったといいます。
2歳差の姉妹ですから、幼少期に姉が大きいのは当然です。問題はどこで逆転したのか、という点にあります。
小6の美帆が2歳上の姉の記録を抜いた
女性自身が2018年1月に報じた家族インタビューに、その手がかりがありました。父・愛徳さんはこう振り返っています。
「スケートの成績は、美帆ばかりが取り沙汰されますが、お姉ちゃんも速かったんですよ。小学校のときは、十勝の試合では常に表彰台の真ん中でした」
ところが妹はそれ以上に速く、小学6年生の時点ですでに2歳上の姉の記録を抜いていたといいます。中学に上がると学年別ではなく同じレースで競うようになり、中学1年の妹が中学3年の姉をタイムでも順位でも上回る状況が生まれました。
身体の成長と競技成績の逆転が、ほぼ同じ時期に重なっていたことになります。髙木菜那さんの身長が中学2年で止まったのは、まさにこの頃です。
17歳の春に「妹さんですか」と間違えられた
体格差が周囲の目にどう映っていたかを示す、象徴的なエピソードがあります。
テレ朝POSTによれば、当時17歳だった菜那さんが取材陣から「そちらは妹さんですか?」と声をかけられ、すかさず「姉です。よく間違えられます」と返したことがありました。妹より9cm低い155cmという体格のため、姉妹の上下を取り違えられることが日常的にあったのです。
妹との身長差9cm・体重差10kg
数字で並べると、姉妹の体格差がはっきりします。
| 項目 | 髙木菜那 | 髙木美帆 | 差 |
|---|---|---|---|
| 生年月日 | 1992年7月2日 | 1994年5月22日 | 1歳10か月 |
| 身長 | 155cm | 164cm | 9cm |
| 体重 | 48kg | 58kg | 10kg |
| BMI | 約20.0 | 約21.6 | 約1.6 |
同じ町で育ち、同じ競技に進み、同じ食卓を囲んだ姉妹でありながら、身長で9cm、体重で10kgの開きがありました。父・愛徳さんは幼少期のサッカーについて「姉はサイドバックで駆け上がるタイプ、妹はフォワードの点取り屋だった」と語っています。役割の違いは、体格の違いと無関係ではなかったのかもしれません。
なお妹の美帆さんは2026年2月のミラノ・コルティナ五輪で銅メダル3個を獲得して現役を引退し、五輪メダル計10個という日本女子最多の記録をもって、同年8月4日に国民栄誉賞を受けています。姉妹への注目は今も続いています。
姉妹の体格差がいつ生まれたのか、そして3人きょうだいの長男である兄も小柄だった話は、高木姉妹の身長差9cmを検証した別記事にまとめました。

写真で話題になった髙木菜那の身長差5選
髙木菜那さんの155cmは、誰かと並んだときに一番わかりやすく可視化されます。実際にメディアやSNSで話題になった「身長差」を集めてみました。
5つの身長差を一覧で比較
差が小さい順に並べると、次のようになります。
| 相手 | 相手の身長 | 髙木菜那との差 | 話題になった場面 |
|---|---|---|---|
| 髙木美帆(妹) | 164cm | 9cm | 平昌五輪の団体パシュートなど |
| キム・ボルム(韓国) | 165cm | 10cm | 平昌五輪マススタート 銀メダリスト |
| イレイン・スハウテン(オランダ) | 168cm | 13cm | 平昌五輪マススタート 銅メダリスト |
| プロレスラー | - | 36cm | YouTube企画の押し相撲対決 |
| 渡嘉敷来夢(バスケ) | 193cm | 約40cm | 2022年5月のSNS投稿 |
※キム・ボルム選手とスハウテン選手の身長は英語版Wikipediaの記載値によります。
こうして並べると、9cm差の妹ですら「かなり違う」と感じられていたことがよくわかります。
渡嘉敷来夢との約40cm差が生んだ「小さな妖精」
もっとも大きな話題になったのは、2022年5月に投稿されたバスケットボール日本代表・渡嘉敷来夢選手との2ショットでした。
THE DIGESTの記事によると、155cmの髙木菜那さんと193cmの渡嘉敷選手が並んだ写真に、ファンから「身長差すごい」「小さな妖精がいるなぁ」といったコメントが相次いだといいます。約40cmという差は、大人と小学生ほどの開きです。
引退後もこうした写真が話題になり続けていることが、「髙木菜那 身長」というキーワードが検索され続けている理由のひとつになっています。
スピードスケートで身長155cmは不利だったのか|空気抵抗とストライドで分解
ここからは競技の話です。155cmという体格は、スピードスケートで有利だったのか不利だったのか。感覚論ではなく、要素を分解して考えます。
滑走エネルギーの70%以上は空気抵抗に使われる
スピードスケートは、抵抗との戦いの競技です。日本体育協会「ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景」(前嶋孝)には「スピードスケート競技は、滑走中の外的エネルギーの70%以上が空気抵抗のために使われるといわれています」という記述があります(EMIRA 2018年2月26日の記事より引用)。
空気抵抗の大きさは、進行方向から見た体の面積、いわゆる前投影面積に比例して増えます。体が小さければこの面積も小さくなるため、155cmという体格は空気抵抗の面では有利に働きます。
では、なぜ小柄な選手が世界のトップに少ないのでしょうか。理由は推進力の側にありました。
「一歩で押す距離が短くなる」というストライドの不利
スピードスケートで前に進む力は、氷を斜め後ろに押し出す動作から生まれます。脚が長ければ一度の蹴りで氷を押し続けられる距離が伸び、一歩あたりの推進力が大きくなります。
髙木菜那さん自身、この不利を的確に言葉にしていました。前出の中日新聞には「小さいと一歩で押す距離が短くなってしまう。全身を使って、大きく滑る」という本人のコメントが残っています。
不利は距離が長い種目ほど効いてきます。同じ速度を出すために歩数を増やせば、消費するエネルギーも増えるからです。欧米の長身選手と同じタイムを刻むには、より多くの仕事量が要求される構造でした。
平昌五輪 女子団体パシュート代表4人の身長比較
日本代表の中でも、髙木菜那さんの小ささは際立っていました。JOCの平昌2018選手プロフィールから、金メダルを獲得した女子団体パシュートのメンバー4人のデータを集計しています。
| 選手 | 身長 | 体重 |
|---|---|---|
| 菊池彩花 | 170cm | 61kg |
| 髙木美帆 | 164cm | 58kg |
| 佐藤綾乃 | 157cm | 56kg |
| 髙木菜那 | 155cm | 48kg |
| 4人の平均 | 161.5cm | 55.8kg |
チーム平均161.5cmに対して6.5cm低く、体重も4人で唯一50kgを切っていました。団体パシュートは3人が縦一列で滑り、先頭を交代しながら進む種目です。先頭に立つ選手が最大の空気抵抗を受け、後ろの2人は力を温存できます。
サンスポは2018年2月の記事で、菜那さんについて「今回のチームで最も小柄ながら、仲間を生かす巧みな脚の運びが特長だ」と評しました。体格で劣る分を、隊列の中での役割で埋めていたわけです。
身長155cmが武器に変わった日|マススタート24人中最も小柄な初代女王
不利ばかりを並べてきましたが、平昌五輪の最終盤、その身長は明確に武器へと転じます。
マススタートは16周を団子状態で進む
マススタートは2018年平昌大会から採用された新種目です。ルールの要点は次のとおりでした。
- 20人前後が一斉にスタートし、1周約400mのコースを16周(合計約6400m)滑る
- 4周目・8周目・12周目の通過順で上位3選手にポイントが与えられる
- ゴール時の上位6選手に60・40・20・10・6・3ポイントが加算される
- 1周目は転倒防止のため集団走行が義務づけられ、加速は禁止される
タイムを競う従来の種目とは性質が異なり、集団の中での駆け引きが勝敗を左右します。選手同士が密集した「団子状態」が長く続くため、位置取りの巧拙がそのまま結果に直結する種目です。
出場24選手の中で最も小柄だった
平昌大会の女子マススタートは、1回戦2組(各12人)の計24人が出場し、上位16人が決勝に進む方式でした。中日新聞はこの24人について「身長一五五センチと出場二十四選手の中で最も小柄」と報じています。
そして本人は、レース前からこの体格を利点として捉えていました。同紙が伝えた試合前のコメントがこちらです。
「他の選手の背後について空気抵抗を減らしたり、狭いところを行くには有利かな」
タイムを削る種目では不利だった小柄な体が、集団戦では2つの利点に変わります。前の選手の背後に完全に隠れて空気抵抗を減らせること、そして選手同士のわずかな隙間を通り抜けられることです。
表彰台3人の身長比較|金155cm・銀165cm・銅168cm
実際にメダルを獲得した3人を並べると、体格の異質さが際立ちます。
| 順位 | 選手 | 国 | 身長 |
|---|---|---|---|
| 金 | 髙木菜那 | 日本 | 155cm |
| 銀 | キム・ボルム | 韓国 | 165cm |
| 銅 | イレイン・スハウテン | オランダ | 168cm |
銀メダリストとは10cm、銅メダリストとは13cmの差があります。表彰台の中央に立ったのが最も小さな選手だったという事実が、この種目の性質を物語っています。
リアルタイムで見た人の記憶に残る「転ばない滑り」
筆者は2018年2月24日のこのレースを、リアルタイムで見ていました。今も残っているのは「ミスがひとつもない、圧巻の滑り」という印象です。最終コーナーで先頭のオランダ選手が外へ膨らんだ瞬間、その内側をすっと突いて先頭に立ち、そのままゴールする。当時は展開の鮮やかさに驚くばかりでしたが、資料を調べていくと、この印象には裏づけがありました。
女性自身の取材で、父・愛徳さんが妹・美帆さんとの相性についてこう語っていたのです。
「特に菜那は人について滑るのが上手。しかもレースで転んだことがないんです。どんどん引っ張っても、菜那なら意地でもついてこられる。その安心感は、美帆にとって大きいでしょう」
「人について滑るのが上手」「レースで転んだことがない」。マススタートという密集競技で求められる資質そのものです。小柄だから隙間を通れた、という単純な話ではありません。集団の中で他人の背後に張りつき続け、接触しても崩れない体幹と技術があって初めて、あの最終コーナーが成立しました。
ただし、この「転ばない」という評価には後日談があります。2022年北京五輪では、団体パシュート決勝の最終周最終コーナーで転倒して銀メダルに終わり、マススタート1回戦でも首位のまま最終コーナーで転倒して14位に沈みました。転ばない選手が、最後の五輪で二度転んだのです。それでも1500mでは8位入賞を果たしています。
身長のハンデを埋めた3つの取り組み
体格の不利を打ち消すために、髙木菜那さんは具体的な積み重ねをしてきました。代表的な3つを挙げます。
- 低い重心のフォーム:高校卒業後に入社した日本電産サンキョーには、バンクーバー五輪500m銀メダリストの長島圭一郎さんが所属していました。中日新聞によれば、その「低い重心から足を力強く前に運ぶフォーム」を参考にしたといいます。重心を低く保てば空気抵抗が減り、氷を押す方向も安定します。
- 室伏広治さんへの師事:平昌五輪後の2019年から3年間、アテネ五輪ハンマー投げ金メダリストの室伏広治さんに股関節と肩甲骨の使い方を教わりました。本人は中日スポーツの取材に「上半身と下半身の連動や細かい筋肉(インナーマッスル)を使っていかに効率よく体を動かせるかを学べた」と語っています。
- 1000分の1mm単位のブレード調整:所属先の日本電産サンキョーは、オルゴール製造で培った精密加工技術をスケート靴のブレード調整に活かしていました。同社の用具技術サポート担当者はEMIRAの取材に「選手の要望に合わせて1000分の1mm単位で調整することで、1秒以下のタイム差に影響が出てくる」と説明しています。
3つに共通するのは、体格そのものを変えるのではなく、体格が生む不利を別の要素で相殺するという発想です。引退会見で語った「身長は言い訳にしたくなかった」(朝日新聞デジタル 2022年4月6日)という一言は、この積み重ねの上にありました。
この考え方について、本人はのちのインタビューでより具体的に語っています。2023年11月に公開されたCHANTO WEBの取材で、菜那さんはこう述べました。
「私の155cmという身長もそうですね。どのスポーツも身長が大きいほうが有利かとは思いますが、だからといって身長が低いことを負けた言い訳にして頑張らないのは違うのかなと。身長が小さいこと、妹に負けているという事実を変えることはできないので、そこにばかり執着するのをやめようと思ったんです」
変えられない事実に抗うのではなく、変えられるものに目を向ける。この一文が、155cmという数字との10年以上にわたる付き合い方を、もっとも正確に言い表しています。ちなみにこの発言は、本人が自分の口で「155cm」と述べた数少ない記録のひとつでもあります。
冬季競技では、指導者との関係が選手を大きく伸ばす例が少なくありません。スキージャンプにも師弟が掴んだ銅メダルの物語があり、競技を超えて通じるものがあります。

髙木菜那の身長に関するよくある質問
検索でよく調べられている疑問に、ここまでの内容を踏まえて答えます。
身長と体重は?
身長155cm、体重48kgです。JOCの平昌2018選手プロフィールおよび時事ドットコムの北京2022選手データに記載されています。2014年ソチ五輪時点では体重47kgでした。本人の公式サイトには身長欄そのものがありません。
兄はどんな人?
兄・大輔さんは中学校の教諭です。女性自身が2018年1月に報じた時点で27歳でした。
髙木家でスケートを最初に始めたのは、実はこの兄でした。長野五輪で清水宏保さんが金メダルを獲得したことに触発されて滑り始め、その姿を見た小学1年の菜那さんが「やってみたい」と言い出し、末っ子の美帆さんも5歳から続いたという流れです。公式サイトの経歴にも「7歳から兄の影響でスピードスケートを始め」と明記されています。
金メダリスト姉妹の出発点をつくったのは兄だった、というわけです。兄が小学6年生のマラソン大会で「わざと転んだ」という出来事や、それを機に両親が「頑張れ」を封印した経緯は、兄を含む3きょうだいの話で詳しく扱っています。

どこの大学院を出た?
筑波大学大学院の博士前期課程を、2025年3月29日に修了しています。引退会見で「スポーツを深く学び、子どもたちと経験を分かち合いたい」と語った言葉を、そのまま実行した形です。
現在は何をしている?
現役引退後、所属していた日本電産サンキョースケート部が廃部となったため退社し、現在はフリーランスで活動しています。主な活動は次のとおりです。
- スピードスケート競技の解説者(2026年ミラノ・コルティナ五輪でも解説を担当)
- TBS「ラヴィット!」火曜「ラヴィット!ファミリー」のシーズンレギュラー(2026年4月〜)
- 全国の教育機関・企業を対象とした講演活動
- 著書『7回転んでも8回起きる』(徳間書店、2026年2月7日刊行)
ミラノ・コルティナ五輪では、実妹の美帆さんを「髙木選手」と呼んで解説したことも話題になりました。伝え手としてのキャリアを着実に重ねています。
「高木」と「髙木」はどちらが正しい?
正式表記は「髙」(はしごだか)を使う「髙木菜那」です。ただし報道機関の多くはシステム上の都合から「高木菜那」と表記しており、どちらでも同一人物を指します。公式サイトもJOCも「髙木」を採用しています。
身長の数字と同じで、表記も媒体によって揺れるものです。当ブログでは154cmの林田理沙さんのように、複数メディアで数値が食い違う例も検証しています。

まとめ|髙木菜那の身長155cmは「言い訳」ではなく武器になった
この記事で確かめたことを整理します。
- 髙木菜那さんの身長は155cm、体重48kg。ただし本人の公式サイトには身長欄が存在せず、155cmの出どころはJOCの選手登録データだった
- JOCの大会別アーカイブを2014年から追っても身長は不変。本人がXに投稿した「155cm〜156cm」は、1日の中での身長変動を踏まえれば公式値と矛盾しない
- 155cmは17歳女子の全国平均158.0cmより3.0cm低く、統計上は13歳女子の平均と同じ数字。「中学2年で伸びが止まった」という本人の証言と正確に一致する
- 身長が語られ続けるのは9cm高い妹の存在が大きい。幼少期は姉のほうが背が高く、小6の妹に記録を抜かれた時期と成長が止まった時期が重なっている
- スピードスケートでは空気抵抗の面で有利、ストライドの面で不利。集団戦のマススタートでは前者が効き、24選手中最も小柄な体で初代女王になった
- 本人は「身長が低いことを負けた言い訳にして頑張らないのは違う」と語り、変えられない事実より変えられるものに目を向けてきた
155cmという数字だけを見れば、世界と戦うには小さすぎる体でした。それでも髙木菜那さんは、夏冬を通じて日本人女子で初めて、ひとつの五輪で2つの金メダルを獲得した選手になりました。
「身長は言い訳にしたくなかった」。引退会見で残したこの一言に、10年以上をかけて155cmと向き合い続けた歳月が詰まっています。皆さんがこれから氷上の映像を見返すとき、その小さな体が何をしていたのかが、少し違って見えるはずです。
参考・出典
- NANA TAKAGI Official Web Site(nana-takagi.com)
- 日本オリンピック委員会(JOC)「髙木 菜那」ソチ2014冬季/平昌2018冬季 選手プロフィール
- 時事ドットコム「北京オリンピック2022 スピードスケート 高木 菜那」
- フジテレビ「スケート∞リンク〜フジスケ〜 髙木 菜那 Nana TAKAGI」
- 髙木菜那 公式X(@naaaana777)2026年4月4日投稿/JFN「From Athlete!」公式X 2026年5月16日投稿
- 中日新聞Web「高木菜『金』 マススタート初代女王は155センチ」(2018年2月25日)
- 朝日新聞デジタル「『小さくても絶対に…』 高木菜那、155センチの体に秘めたもの」(2022年4月6日)
- 中日スポーツ「高木菜那『どのスポーツも基礎は一緒なんだ』室伏広治さんに『師事』して気づいたこと」(2022年2月2日)
- 女性自身「スピードスケート高木美帆・菜那姉妹 父・恩師が語る対称的な素顔」(2018年1月27日/livedoorニュース)
- CHANTO WEB「元スピードスケート・高木菜那『スーパー中学生・美帆の姉としての葛藤も』見守った両親の教育方針」(2023年11月15日)
- テレ朝POST「金メダル最有力、スピードスケート高木姉妹。五輪同時出場までの“光と影”の歴史」
- サンケイスポーツ「高木菜那&美帆、姉妹で金!冬季五輪日本初のきょうだい同時メダル」(2018年2月21日)
- THE DIGEST「高木菜那が女子バスケの渡嘉敷来夢との2ショットを公開!“身長差40センチ”に…」(2022年5月29日)
- デイリースポーツ「高木菜那さん 幼少期の姉妹秘蔵写真公開で…」(2025年5月30日)
- EMIRA「空気抵抗と摩擦抵抗を最小限に!スピードスケートのもう一つの戦い」(2018年2月26日)
- 文部科学省「令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値」(2025年2月12日公表)
- Wikipedia(日本語版「髙木菜那」「マススタート」、英語版「Kim Bo-reum」「Irene Schouten」)

